広島・山口でこだわりの注文住宅の設計を行う「T.N.A」の事務所コラムページです。

事務所コラム

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本当に必要な性能の先にあるもの

暑い、暑すぎる、、、。なんてぼやいてしまいそうな梅雨の間の夏日和。アイスクリームでも食べてなごみたいものです。だけど夕方は気温も下がってきて夕涼みは気持ち良いものです。こうやって四季折々の変化を楽しむのも日本独特の良い習慣だと思います。

 

僕は住宅の断熱等は勉強している方だと思いますが、近年国の省エネルギー施策も相まって高気密高断熱の住宅がハウスメーカーや工務店で広まっております。国のゼロエネ住宅に対する補助金施策もそれを加速させており、そんな僕も現在工務店さんのゼロエネ住宅の商品プロジェクトにアドバイザーとして参加しています。時代はゼロエネだと言わんばかりにこの数年急に浸透してきているのが現実です。ゼロエネはあくまで建物自体の省エネが一つの柱ですが、工務店さんの中にはQ値で1.5以下や1以下という超ハイスペックな断熱性を謳っている所もあるようです。

 

だけど僕は設計屋として単純なハイスペック住宅には疑問を感じずにはいられません。性能が良いに越したことはないのですが、性能を良くし過ぎるともはや窓を開けない方がよくなってしまう状態になるそうです。全熱交換の換気扇をつけてエアコンを一日中つけているほうが、省エネで快適だそうです、、、。そこに日本の四季を感じる空間はあるでしょうか。夏の夕方、窓を開けて香取線香の匂いを嗅ぎながら虫の鳴き声を聞く一時。日本にある四季の移ろいを暑い寒いと言いながらたまに出会う気持ち良い瞬間。そんな環境は必要だと思います。もちろんヒートショックや熱中症という最低限の室内環境は保つべきですが、省エネ、ゼロエネが時代の先端だといってやみ雲に推し進める最近の風潮には疑問を感じてしまうのです。この辺が結局は経済至上主義の現代が住宅に必要な事に対するズレにつながっているような気がします。

 

ちなみに僕の家は高気密高断熱でもなく普通の性能です。だけど、光熱費は月平均で一万円を切ります。結論はエアコンを使わないからなのですが、そのために窓の位置を考えて季節や時間によって必要な太陽光、通風を考えています。それだけです。昔の日本の住宅で考えられていた工夫を応用しただけのシンプルな事をしています。もちろん気温が35℃になれば窓を開けても暑い時もありますし、0℃の時はエアコンに頼らざるを得ません。だけどそれは一年の中では意外と少ない時間。時には暑い、寒いを感じながらも家に入り込む光や風、外から聞こえる虫の声等を当たり前のように感じる日常こそ住宅において大切な事かなと考えています。窓の位置を考える。これはゼロエネにも省エネにも基準はありません。結局敷地一つ一つに対して住宅は最適な環境をつくるように工夫していくべきなんだと思います。逆に言えばこれは僕たち設計屋じゃないとできないことなのかもしれません。効率が悪いからハウスメーカーではとてもできないでしょう。

久しぶりに長くなってしまいました、、、。(笑)2020年には省エネ住宅が義務化されますが、それまでに住宅と省エネの在り方がどうなっていくか見ものです。ほんとに太陽光ありきのゼロエネ住宅が普及しちゃうのかななんて一人ぼやいております。ここまで言っておいてなんですが、断熱はもちろん良いに越したことはありません。(笑)断熱の意識を持ちながら性能の先にある心地よさ、住まい手が必要な環境を設計することが大切だとぼくは思っているだけです、、、。

 

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